納得のいく治療法を択ぶ

月日  
 
 事項   
治療内容と結果    状況および感想 

05 年

3

22

  
 

治療法の選択は自分で

 

主治医から、改めて検討会の判定結果と治療法の説明があった。
 治療法の選択肢として「手術」「放射線治療」「ホルモン療法」が考えられる。その概要は次のとおり。

全摘手術
 癌を前立腺ごと取り除く治療方法で、いわば切り殺す戦術だ。手術時間は全身麻酔をかけて35時間、入院期間は34週間を要する。最も根治が期待できる療法であるが、重大な後遺症を残す危険をはらむ。

放射線治療
 放射線で癌細胞を焼き殺す戦術。
 体の外から放射線を当てる「外照射療法」が主流で、週5日・7週間程度の通院を要する。前立腺近隣の組織に合併症を併発する恐れがある。

 近年、ヨウ素線源を永久挿入して、前立腺内から照射する「小線源療法(ブラキセラピー)」が開発された。治療期間の短縮と合併症の軽減が期待されるが、対象は「限局癌」に限られる。


ホルモン療法 
 男性ホルモンの分泌抑制剤を皮下注射で投与し、癌の増殖を抑圧するいわば兵糧攻めによる治療法。
 合併症は比較的少ないが、その効果は長続きせず、一定期間を過ぎると、癌組織が再び増殖する欠点がある

 
私には「全摘手術」がベストと勧めてくれたが、結果的には「小線源療法」を強く望む私の意思を尊重することに。
 
 かくして、同療法を取り入れている病院へ転院することに。




 Dr手術可能な病期ならば、迷わず「全摘出手術」を選択して、禍根の種を抹殺、「完治」を期すべきという。

しかし、「肉を切らせて骨を絶つ」戦術が、最良の戦術とは、どうしても思えない。

前立腺だけでなく、精嚢や骨盤膣内のリンパ節をも摘出して、膀胱と尿道を結合する大掛かりな掃討作戦だ。
 当然、性機能不全や排泄障害など深刻な後遺症を、生涯抱え続けることになる。

健康とは、心身共に健全な状態のことである。

米国では「小線源療法(ブラキセラピー)」という負荷の少ない治療法が「手術」とまったく同等、10年間生存率88%の成果をあげている。
 癌再発の場合でも、「ホルモン療法」で病期Bでは10年、病期Dでも3年程度の制癌効果が期待できるという。
 
 一部のデータを鵜呑みにするつもりはないが、これらのデータから私自身のQOL(生活の質)を推し測ることは可能と思う。

QOLへのこだわりから、戦術は「小線源療法」あるのみと、強く主張、最終的には妻やDr賛同(やむを得ずだが)して、我が作戦が決定。  

 武運なく、この戦いに破れたときは「ホルモン療法」だけが戦術として残るが、いささかの迷いもない。



転院に際して



 転院にあたってのDrからのコメントは次のとおり。


道内で「小線源埋め込み手術」を行ってい 
 るの
は北海道がんセンターだけ
・したがって、同院紹介することになる
・これまでのデータから、希望した治療は叶え
 られると思う
病理標本、レントゲン写真等検査データを渡
 すの
紹介状と共に初診時に持参すること

 
 
 Dr
によると、紹介先の「北海道がんセンター」の泌尿器科のスタッフは、信頼に足る優れたチームのよし。
 あなたのチームも評判どおりの優れたチームでした。

検査データ用意の間、Drから「自分達も『小線源療法』導入の準備を始めた」と打ち明けられた。

 こうした努力の広がりで、「患者の意思やQOL」が尊重され、患者の希望する治療が、地方都市でも容易に受けられるようになることを念じつつ戦場を「北海道がんセンター」に移す。



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  5


北海道がんセンター受診


紹介状・検査データを持参して「北海道がんセンター」泌尿器科外来受診。
 担当Dr説明は次のとおりだった。

「小線源療法」について

 
 1)放射線障害が起こりにくい
 2)尿失禁が少なく、性機能も維持されや
    すい

 3)入院院・治療期間が短い
 
 1)前立腺癌の全てには行なえない治療
    ・前立腺に限局の症例のみ可

    再発例には適応しない
    過去に手術をしている場合
    ・前立腺が
40cc以上の場合
 2)外照射よりは少ないが、放射線障害と
    して、
直腸粘膜にびらんや潰瘍の形
    成、尿道の炎
症やひどい時は尿道狭
    窄もあり得る


 これからの治療方針について

前病院から「小線源埋め込み手術」可能との
 紹介だが、念のために本院でも検査する
手術の事前検査のため511日から23
 の日定で入院
いただく
本番は6月の第一週を予定する



 初めての「北海道がんセンター」外来では、受診者の多さに圧倒される。一人当たりの診察時間が、恐ろしく長いのが気にかかる。深刻な患者が多い故なのであろう。

 皆それぞれが、それぞれの「死」と向かい合って、診察を待っていることを思うと、癌戦争最前線の臨場感に身が引き締まる。

そして、緊張の「初診」。
 担当K医師は認定専門医、指導医その他多くの肩書きを持つベテランDrだった。

このK医師、気さくな対応の中に、患者への細やかな配慮が滲む好漢。私の「国立」に対する先入観と程遠かったのが嬉かった。

K医師は札幌厚生病院からの紹介状に、私の「小線源療法」への思いが詳しく書いてあると笑っていた。

ところがなんと、このDr若い患者には「全摘手術」を勧めているとのこと。

全国に先駆けて「小線源療法」を導入した当の本人の一押しが「全摘手術」だったことには驚きを禁じ得なった。

 しかし、患者からの強い希望があり、適応条件と合致する場合には患者の意思を尊重、放射線科と連携して、万全の体制で「小線源療法」実施するとの説明に納得。