原発事故による放射線被曝ニュースで考えること

                              H23. 11. 7

 最近、気がついたことがあります。原発事故による放射線被曝について東京電力や政府はシーベルトやミリシーベルトを多用し、マスコミや市民団体では並べてマイクロシーベルトを使用していることです。

 ご承知のとおり「シーベルト」という言葉は、放射線が人体に与える影響の単位で、1シーベルト=1000ミリシーベルト=100万マイクロシーベルトです。少し複雑なのは1時間当たり線量だったり、被曝総線量(生涯の被曝分として大人50年、子ども70年で計算)だったりすることです。
 もっと複雑なのは、放射性物質の崩壊数を示すベクトルで、物質の種類、身体への取り込み方、年齢などによって影響が異なるので手に負えませんが、放射線医学総合研究所は「健康への影響はシーベルトで考えるのが基本」としています。

 そこでごく最近、話題になっている数値をミリシーベルトに置き換えてみました。
 ○先日、内閣府の食品安全委員会が正式に決定した食品による生涯累積被曝量の基準は100ミリシーベルト。
 ○世田谷区で検出され高放射線濃度で一番高かったのは八幡山のスーパー、高さ1メートル付近で毎時0.01ミ  リシーベルト。
 ○東京都が受け入れる震災瓦礫は2年半でおよそ50万トンだが、112日に宮古を出発した瓦礫の空間線量は毎  時0.000146ミリシーベルト。
 ○林野庁は来春の花粉症シーズンに備えてスギ花粉を調査すると発表、それに先立ってテレビ朝日が奥多摩の  杉花粉を独自に調査した数値は、1キログラムあたり93ベクレル、毎時0.00015ミリシーベルト。

 食品安全委員会が示した生涯100ミリシーベルトは原爆の被害を受けた広島・長崎で蓄積されたデータから、この程度の被曝では人体への影響はないとされた数値だそうです。但し、吸引による内部被曝や外部被曝は含まれていません。  
 国立がん研究センター嘉山理事長のエビデンスに基づく見解でも「200ミリシーベルト以下の放射線量で発癌リスクは確認されていない。仮に発癌リスクが増加すると仮定しても100ミリシーベルトの被曝による癌の危険性は06%増にとどまる」とのことです。
 これを信ずるならば、日本人の2人に1人が癌になるわけですから、危険性が50.6%に上昇すると考えてよいでしょう。そして、今年生まれた赤ちゃんが80歳まで生きるとすると、1年に1.25ミリシーベルト以下の被曝は全く問題ないと・・・。
 一方、国際放射線防護委員会(ICRP)は一般人の内部・外部総被曝量は年間1ミリシーベルト以下、放射線を扱う業務に従事する人は5年間100ミリシーベルト以下を限度と定めています。日本の現状では厳しすぎるという意見もありますが、国際基準準拠こそが国民が信頼できる安全、安心の分岐点と思います。

 八幡山のスーパーは休業に追い込まれましたが、線量が一番高かった場所に毎日10分間佇んだとしても、1年間の積算線量は約0.6ミリシーベルトです。国際基準1ミリシーベルトを下回ります。
 早急かつ迅速な除染は当然ながら、「500メートル先に幼稚園がある」とか「土嚢を積んだだけの粗末な対策」など、テレビでのルポライターの絶叫が妙に気がかりです。同じ世田谷区弦巻の民家で同系のラジウムの上で、20年も生活していた老夫婦に被曝被害はなかったのですから、そんなに大声出さなくても…。

 都に搬入された瓦礫の測定数値は、年間の総被曝量は0.4376ミリシーベルトですから、毎日8時間この瓦礫処理に携わったとしても、国際的職業被曝限度の50分の1以下、公衆線量限度の半分以下です。
 近隣住民が受け入を危ぶむのは理解できますし、反対する市民がいるのも当然と思いますが、NHKニュースによると「4日、大田区の処理施設で分別後の可燃物の放射線量を測定したところ、線量は検出されなかった。施設周辺の搬入前の線量は0000077ミリシーベルトで、搬入後は0000073ミリシーベルトだった」とのことです。
 ひとそれぞれに考えがありましょうが、私は当初瓦礫処理に協力するはずの30都道府県272市町村が、いつの間にか10分の1に減少してしまったことはとても残念です。「がんばろう日本」は、国民皆で痛みを分かちあう「合い言葉」と信じていましたから…。

 テレビ朝日による杉花粉の測定値は、毎日10時間花粉を浴び続けたとしても0.0015ミリシーベルトです。カリウムを含むバナナ1本食べると0.001ミリシーベルト被曝するそうですから、バナナ1.5本分の被曝です。いつも国に対して説明責任を強く求めるテレビ朝日さんですから、どうしたら1キログラムもの花粉を体内に取り入れることができるのを説明できますよね。それに、私たちが食物から1年間で約0.4ミリシーベルト「内部被曝」していることも併せて報道してほしいものです。

 ちなみに、私が経験したブラキセラピーは、挿入直後に子供を1時間抱いた場合の被曝量は約0.1ミリシーベルトで八幡山のスーパーの10倍です。私自身、ブラキセラピーの効果と発癌リスクの関係は、いわばラドン泉やラジウム泉などの入浴効果と発癌リスクの関係と同じものと割り切っています。もちろん、周りの人を被爆させないよう最大限の注意も払いましたし、特に妊婦や乳幼児には近寄らないよう神経を尖らせましたが…。
 蛇足ながら、胸部CT検査1回の線量は10ミリシーベルトです。これまで10回以上CT検査を受けているので、私はCT検査だけで100ミリシーベルト超えです。それでも、12月に予定している脳ドックは受けます。

 それにもう一言。
 日本の技術力をもってすれば原発に依存しないエネルギー確保は十分に可能です。私の故郷である稚内市では74基の風力発電施設と約3万枚の太陽光発電パネルを有しており、自然エネルギーでは最先進都市のひとつといえましょう。北海道電力が事故で送電が止まっても何とか自力で電力をまかなえます。
 なので、電力の原発依存は決して必然でありません。再生可能な自然エネルギーを拡大して、段階的に
原子力発電廃止の考えを強く支持します。